リトアニアリネンのこと 2
2013-8-4
嫁入り道具のハウスリネン、刺繍を代々の女性が受け継ぐことなどが伝統として残っているところも多いという、ヨーロッパ諸国の家庭では日常のなかで親しまれているリネンの生地。
それは絵本にも描かれていて、東欧(現在は中欧に含まれるみたいです)チェコのキャラクター、もぐら“クルテク”の「もぐらとズボン」では、
リネン生地の作り方がそのままストーリーになっています。
クルテクが干してあった青いズボンを見つけるところから物語ははじまります。
同じものが欲しくなったクルテクはズボンを探し始めますが、
誰に聞いてもわからなくて途方に暮れて泣いていると、
近くに咲いていた亜麻の花が手に入れる方法を教えてくれます。
クルテクはいろんな虫や動物、生きものたちに手伝ってもらいながら、
亜麻の繊維を取り出し、糸を紡ぎ、生地を織りあげ、
最後にはズボンが完成する、というお話。
実際にフラックスから取り出された繊維は、
リトアニアで古くから続く製法と織機で織りあげられていくそうです。
絵本のストーリーを追いながら、リネン生地のできるまでを紹介していきます。
リネンの原料はフラックスの茎の部分ですから、
収穫した亜麻の茎を水に浸して柔らかくしてから、茎の繊維を取り出します。
カセという、紡いだ糸を巻き取る道具と、整経(せいけい)という、経(たて)糸を織機にセットする工程。
生地の目を整える生地整経という工程。最後に生地を巻き取っていきます。
ここで紹介させてもらったのは、
こうして出来上がった生地の縮絨(縮めること)をしたり、
製品に仕立てる縫製までを請け負ったりもしているほどの、大規模工場です。
ミシン場や製品の検品、出荷作業
このように生地にかかるほとんど全ての工程を工場内あるいは国内で行っているところは、現在、かつて繊維業のさかんな産地であった場所でも減ってきているように思います。
例えばリネンの産地として有名なアイルランドでさえ亜麻栽培や紡績※は他国に頼っているそうで、
原料はヨーロッパ産のフラックスだとしても紡績は中国などで行われているといいます。
日本でも紡績工場はすでに国内にはなくなってしまったと聞きました。
※紡績=短い繊維を撚り合わせて糸にすること。繊維に撚りをかけることによって、糸の太さを維持し糸に丸みをつける、弾力伸度をもたせる、などの効果があります。
工場によって織機や製法は微妙に異なるようですが、
リトアニアリネンはネップと言われるリネン独特の節(フシ)が多かったり、
吸湿性を高めるために不均一に厚く織っていく伝統の織り方など、ある意味粗野な表情が特徴です。
高級なアイリッシュリネンのように、細い糸で緻密に美しく織りあげる気品の高いリネンとはまた違った、
日常使いに適した素朴さ、タフさが魅力なのです。
つづく。 → リネンの色のこと
(画像提供:Faux & Cachet Inc. )