革の用語-1 「なめし」

2011-5-18


このへんで、度々登場するワード、“なめし”についての説明をしようと思います。
専門用語が度々出てくるので、読んでいてわからない部分があるという方もいらっしゃるかもしれません。
「用語集」と題して、必要かなと思う基本用語を説明していきます。
あまり適当なことも書けないので、ちゃんと調べてから、少しずつ追記していきます。

・・・今回はあまり画像が用意できないので、文章だけ長々と書きます。
興味のあるかただけ読んでください。so_110510
← タンナーのマークと、革の大きさを表す数字

通常は、革の裏にシールやスタンプされてたりします。



漢字で「革」へんに「柔」と書いて(PCで変換されにくい漢字です)、
「なめし」と読むこの作業は、読んで字のごとく、そのままでは腐敗したり硬くなってしまう動物の皮(=原皮)にさまざまな防腐処理を施し、柔らかく、使用に耐え得る強度をもった「革」へと加工することを指します。
その作業は染色までに10工程ほど、なめしの全工程で20ほどあるそうです。

「なめし」には、「(ベジタブル)タンニンなめし」と呼ばれる、植物の渋(タンニン)を使うものと、「クロムなめし」と呼ばれる、化学薬品を使うもの、「混合・合成なめし、コンビネーション」などと呼ばれる、その2種類を混合させたものの、大きく3種類に分けられます。

近代には、短時間で大量かつ安定的に工程が行われるうえ、耐熱性、染色性、弾力性、品質の安定性にも優れる「クロムなめし」の技術が発達し、主流となっています。
もともとは100年程前にドイツで軍事用に開発された技術で、クロム鉱石を利用するため排水処理などに注意が必要とされるそうです。
近年では環境保全などの観点から、排水による汚染の心配がなく、古代から受け継がれている手法の「タンニンなめし」が見直され、再び脚光を浴びています。

なめしの過程で使う器材の違いも、ポイントです。
クロムなめし、混合なめしは、ドラム状の容器を使います。
タンニンなめしは、同じようにドラムを使う場合と、古くから伝わる”ピット”とよばれるプール状の槽を使う「ピットなめし」という手法があります。

「タンニンなめし」は、濃度の違うなめし剤=植物(ミモザやチェストなど)の渋(タンニン)液が入ったいくつもの”ピット”に、濃度の薄い槽から順に何度も漬ける作業を繰り返すため、仕上がるまでにとても時間がかかります。
濃度を少しずつ上げて皮に何度も渋を浸透させることによって、より堅牢度(張りや腰、硬さ)を高くし、最終的には靴底に使われるような硬い革(くぎを踏んでも刺さらないほど)にもなります。

一般的に「ヌメ革」とは、このタンニンなめしを施した、染色前の革のことで、「白ヌメ・素あげ」とも呼ばれます。
白ヌメの色は、タンニンの色・生成~ベージュをしています。
これを黒や茶などに染色したものや、オイルを入れたものも、おおきくはヌメ革といいます。

タンニンなめしは、コストが高いうえ、すっぴん状態ゆえに、品質が原皮の状態に大きく左右されてしまうというのが難点です。

けれども、タンニンなめしの牛ヌメ革は強度と耐久性にすぐれています。
そして、その自然な風合いを、使うその人の手で育てていく、とても愛着の湧く素材だと思います。

ちなみに、タンナー(皮革製造業者・なめし業者)とは、英語の”なめす”を意味する”tan”に由来するそうです。

そして、革独特のにおい(好き嫌いがあると思いますが、わたしは好きです)、おそらくこのなめし剤や染料などのにおいが残っているのだと思います。


この仕事をはじめて、革のことをもっと知ろうと革に関する本や雑誌、ネットの情報を読み漁り、理解が深まったことがたくさんあります。
(旦那さんは知っていても聞かないと教えてくれないので・・・本人曰く、話せばめっちゃ長くなるから。)

革の産地で有名なイタリア、フランス、イギリスなどには、いわゆる高級ブランドの革を製造している伝統あるタンナーが数多くあるようです。

けれども、日本の皮革製造技術は世界的にも評価されていること、またその高い技術をもって製造されている日本のタンナーの存在を知りました。
全国に数ヶ所ある革の産地には、それぞれの地域で用途別に得意分野があるそうです。
なかでもイタリアでも数社しか行っていない“ピット製法”のタンニンなめし革を製造されているタンナーが、栃木や姫路などにあるそうです。

姫路は全国の6割ほどのタンナーが集中している有名な革の産地で、コードバンという馬のお尻部分の最高級革をなめすことのできる、世界に2社しかないタンナーのうちのひとつや、世界にひとつしかない「白なめし」という、究極のなめし技術を受け継ぐタンナーも現存しているそうです。

また、”栃木レザー”さんは、タンニンなめしにこだわって、革をつくっておられる世界的にも有名なタンナーさんだそうです。(ホームページもありますので、検索してみてください。)

そんな感じで、最近はタンニンなめしばかりがクローズアップされていますが、どの「なめし」にもそれぞれの良し悪し・向き不向きはあるようです。

クロムなめしには、革を柔らかくも硬くもできる、発色が良く変色しにくい、火に強い、など良い点もありますし、廃水処理も適切にされていれば、環境に負荷を与えることはないようです。
また、作るアイテムによっても革やなめしの適正があるので、私たちは一概にどちらかが良い、とする立場でもありません。

そして、最近は「脱クロム」といって、クロムなめしをした革のクロム剤を抜いてから、タンニンを入れ直すという手法も新しく実用化されているそうです。


・・・「なめし」という工程のお話をざっと書かせてもらいました。
この量で”ざっと”というレベルです。
まだまだ奥が深い、革という素材。

ヌイトメルでは、タンニンなめしの自然な風合いが好きなので、主にタンニンなめしの革を使っていますが、クロムなめしの革には素材感として面白いもの、かわいい色・柄のものがあったりするので、心惹かれる場合はヌッタンや、ヌイトメルでも限定的に使うことにしています。
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最後に。
この記事は、色々な書物や情報を、自分なりに解釈し、部分的に引用させていただいたりして、書きました。
もし、間違っている部分を見つけたという方がいらっしゃる場合は、ご指摘・訂正いただければ幸いです。

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