販売すること
2014-5-10
ヌイトメルでものを作りはじめ、また販売をはじめた2011年から、数年が過ぎました。
「販売すること(1~3)」と題して書いた当時は、ヌイトメルを始めてすぐのころで、
その時期とその前から考えていたことや葛藤を率直に記しました。
その後、数年間を試行錯誤しながら続けているわけですが、その間に卸販売もはじめました。
続けているうちに、考えが変化した部分もあります。
そこで、2014年5月現在に考える「販売すること」について、改めて書きたいと思います。
ヌイトメルはふたりでやっています。
製作はクニヨシ、その他の作業もろもろはアツコ、というように、おおまかな役割分担がありますが、
ともに、ジャンルは少し違いますがメーカーの製造部門で勤務経験があり、
これまでの経験や見聞きしてきたことをふまえて、今の仕事を選び、現在の状況があるわけです。
買いものをするのに、製造元からの「直売」が良いと今も考えます。
作り手が直接売り、また直接買うことのメリットは、双方にとって大きいからです。
はじめたころは、まずは自分たちでお客さまに接してからでないとわからないことがあると思ったので、
直接販売できる方法からはじめました。卸販売は、ご縁とタイミングで考えようと。
そして何より、3年前はまだ漠然としていて、お店との関係、お客様との関係についての
自分たちの考えがまとまっていなかったように思います。
でも、今は小売店さんで販売することの重要性や意義を感じています。
自分たちの経験もふまえた考えなのですが、ものを買う側の立場として。
新しいもの、古いもの、「もの」のことを知ることは、たいへん労力が必要なことだと思います。
好きならば自然とアンテナを張っていられるものですが、
日常でやることが多いと情報を取り入れることがだんだん難しくなっていきます。
子育て、介護、仕事、勉強、
労力をかけていること、熱中していることが「もの」にかかわる以外のことだとなおさら、
「もの」に対する情報に対して、時間もお金も費やしにくい状況になってきますし。
でも、素敵なものを手に入れて使うことのトキメキというのは、
いくら物欲がなくなってきたからといっても、大なり小なりあるもので。
そういうときに、好きなお店があるととてもいいと思います。
セレクトが自分の好みにぴったりだとか、
友人がやっているお店や、あこがれのお店、
お店のオーナーさん、店員さんの人柄や選ぶものが好きで、
そのお店で買いたいと思うのは、自然なこと。
ものを選ぶのも探すのも伝えるのも、培われた経験や知識、技術で成り立っていて、
それは欠かせない仕事なんだと思います。
お店からの発信、また信頼のおける情報は、受け取る側の努力がとくに必要でないのもうれしい。
そういう好きなお店を支えるのも「買いもの」という行為なので、
自分たちもできるだけ、同じものでも気に入ったお店で買うようにしています。
「もの」は「ひと」なんだなぁ、と思います。
結局、奥に「ひと」が感じられる「もの」に惹かれていると感じるのです。
人の手、人の目、人の技術、心遣いや考え。
しゃもじでも、お椀でも、土鍋でも、石鹸でも、箱でも、手ぬぐいでも、くつしたでも
うれしくなる使い心地があって、そういう使い心地を実感したときには
作り手としてとても勉強になるのです。
そういう「うれしくなるもの」には愛着が沸くし、そういうものが作れたらと思います。
といいつつ、あまりに想いがつまりすぎた重いものを作りたいわけではありません。笑
あくまで、職人として気の利いたものを。
ものを作る、その先の部分を託す、といった感じでしょうか。
作る側にとっては、小売店さんもお客様なので、
失礼なことを書いていないか、とても心配ですが・・・
そういうわけで、直売にこだわらずご縁のあったお店のかたと、
これからもつながっていられたらいいな、と思います。