ディアオイルヌバック
2011-3-29
今回は、ディア(鹿革)オイルヌバックのことを紹介します。
この革との出会いは4年程前です。
旦那さんが靴のパタンナーを辞めた頃に知り合いの工場さんで見つけた、とってもやわらかくしっとりとした鹿革。
鹿革好きの彼は、それを2枚譲ってもらっていました。
オイルヌバックで作った巾着、通称”せんず袋” ↓
昨年、イベント用に鞄をつくるときに、棚の奥から出してきたそのディアは、薄く軽く、しっとりとしていて、とっても柔らかい、袋ものにぴったりの革でした。
袋もの革かばん・・・なんだかやぼったいものを想像してしまいますが。
目指すのは、ラフに持てる上品なカバン。
ディア(鹿革)のことは、前に紹介しました。(→素材のこと-2)
今回は“ヌバック”について少し書きます。
革には通常、表と裏があります。
つるつる・滑らかな側が表(グレイン)、ざらざら・起毛している側が裏(これをこすって起毛させたものがスエード・ベロアといいます)です。
ちなみにスエードと混同されがちな「バックスキン」ですが、正しくは“オス鹿(BUCK)の革の表面をやすりなどで起毛させた革”のことを指します。なぜ“オス鹿”に限定するのかというと、オス鹿は日常的に角で戦いますので表皮が傷ついていることが多く、そのキズを取り除くため、と考えられます。ここまで詳しくは辞典にも載っておらず、想像ですが・・・。
・・・長くなるので、革の名称・種類について、詳しくは後日補足します。
ヌバックはスエードと比べると“毛足が短く、しなやかで柔らかい肌触り”というのが特徴です。
革の種類・特質によっては、スエード側を表(きれいな方)とするものもありますし、一概にどちらが高価ともいえません。
ヌバックは、スエードとは異なり、牛革などの革の表面(“銀(ぎん)面”といいます)を“目の細かい”サンドペーパーなどで削って起毛させたもので、バックスキンと同様の仕上げをすることから“NEO(新しい)BUCK(バック)”を語源とするそうです。
・・・ということは、ディアヌバック=バックスキンということになりますが、お店(小売り)ではあえて正しい名称を使うことはなく、“ヌバック”と総称するようですので、ここではディアヌバックと呼ぶことにします。
その、ヌバックにたっぷりとオイルをしみこませて仕上げたものが、オイルヌバックです。
4年も前のこの革、はたしてまだあるのかとドキドキしましたが、残っていたんです。
奇跡です!
その工場さんが、とても気に入って例外的に仕入れたデッドストックの革、ということでしたが、使う機会がなく眠っていたそうで、快く譲っていただくことができました。
ディアは原皮が希少な素材。
しかも、今はさらに不足しているようで、同じものを新しく作ってもらうことはもう不可能だろうとのこと。
天然皮革というのは、生き物から加工しているため原皮の状態がとても重要で、しかも全く同じ状態・色のものをつくるのは難しいと言われています。
“タンニンなめし”のものはさらにその難易度も上がります。
つまり、在庫を使いきったら、終わりです。
これをどっさり買い占めたわたしたち。
ほんとに、とっても幸運でした。
色はダークブラウン・ネイビー(これも大好きな色!)の2色です。
このネイビーの発色が、また絶妙なんです。
そんなディアオイルヌバックのかばん、お店ではたくさんの人が手にとって触ってくださっています。
とっても思い入れがあるのですが、店先でこんなに長々と説明することもできず、その素材の魅力をお伝えできないのが残念なので、ここで改めて紹介しました。
そして、これからこの素材で何をつくろうかと、ひそかにニヤついてしまうのでした。
(2012.4.26追記 ネイビーの在庫が少なくなってきましたが、同じ革を再現できそうです。ただ、色や風合いが現在と同様になるかはまだ不明です。また準備ができ次第報告すると思います。)
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