タンナーさん訪問の後で考えたこと 1

2012-12-9

かなり前の話ですが、初夏に知り合いを通してご縁のあった姫路のタンナー(革の工場)さんの見学をさせていただきました。これまで他のタンナーさんにも伺ったこともありましたが、今回も色々とこちらの質問に対して説明をいただき、とても勉強になりました。

   

そうして、自分たちの革に対する考え方に、ひとつの区切りがつきました。
その心境について少し書きたいと思います。
(相変わらず長いので、2回に分けます。)

いつも、革の質には悩まされていました。自分たちの好きな革(タンニンなめしの革)は品質が安定しないからです。

 ※ なめしとは?

 ※ タンニンとは?
    植物の中に含まれているタンニン(渋)のこと。
    植物の木質部、樹皮、葉、小枝、実、根などの部位にタンニンが含まれる。

以前他ブランドの製造請負をやっていたときも、いちばん難しい作業は「裁断」で、製作で頭を悩ませることといったら革質のことでした。
 
 
前にも書きましたが、革は主に食肉の副産物で、もともとは動物の皮です。
野菜もそうですが、自然のものを画一的に生産するには自然の摂理から外れた処置を施さなければなりません。
見栄えの悪い野菜は売れずに廃棄されたり、害虫や雑草を駆除する農薬が散布されるのは旧知のこととして、種を残さない1代限りの“タネ”が一般化し、さらには除草剤で枯れないという、遺伝子を組み替えた作物の種も普及しつつあります。
 
 
科学技術力、工業製品の品質レベルの高さ、洗練された美しさは、それはそれで素晴らしいものだと思います。
ただ、どちらを好むかは単なる「嗜好の違い」と言えることですが、
紆余曲折、歳や経験を重ねるごとに、わたしは何かにつけその「きれいに揃った画一的な」美しさよりも、自然のままの不揃いなもの、自然な素材から人間の勘と技術と手仕事で仕立てられたもの、そういう温かみに、より強く惹かれるようになりました。

職人たちは、いつも“良い品質”に近づけるようにと、勘と技術を磨いてものを作るわけですが、
革の場合、革質は特に原皮の状態に左右されるうえ、気候や水質その他様々な条件が重なってできるのですから、最上の革は常に作られるわけではありません。
ですから、安定的に質の良い革を仕入れるという考え方自体が自然の法則から外れるのだと、今回ようやく実感として腑に落ちたのです。

農産物、海産物、あらゆる自然の恵み、然り。
 
 
天然のものはそもそも安定などしない。
それもまた魅力なのだということです。
 
 
次回へつづく。
 

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