染色のこと

2012-10-18

今日は、杞柳布の草木染めについて書きます。
(杞柳布についてはこちら → kiryu-fu )

杞柳布の染色は、生地開発の当初から但東町の染色家さんにご協力いただいています。
たんとうライフの宮垣さんは、地元豊岡の伝統工芸である「杞柳細工」の廃材となるコリヤナギの皮や、出石の名産「蕎麦」の副産物である蕎麦がらを利用して、杞柳布を染めることをご提案くださいました。
染色することを「色を生地に移してあげる」とおっしゃいます。廃棄物ですので、原料をふんだんに使うことができますし、杞柳の特質(防虫・消臭の効能)も生地に移り、一石三鳥です。

 ↓ 杞柳(コリヤナギ)の皮
 

生地は1回につき1~2mを2枚ずつ、煮出しの染め工程を3回あるいはそれ以上繰り返し、染め重ねていただいています。生地が厚いので、3回以上染めないと色が移らないのだそうです。
その作業はかなりの重労働で、たった一人にお任せするのも大変だと感じていて、昨年から他の染工所へも染色依頼を検討していました。
 
 
アールブリュット=アウトサイダーアート (by Wikipedia)というムーブメントはご存知でしょうか。

一昨年フランスで「アールブリュット ジャポネ展」が開催されるなどメジャーになってきましたが、日本では1970~80年代頃(初期は1940年代)から福祉施設や作業所において、障がいという特質を活かした作品や製品、新たな価値を創造するという取り組みがありました。
クッキーやパン、焼きもの、さをり織り、編み物、刺し子、そして染色。

京都府木津市にある「いづみ福祉会」さんでは、織物や染色に10年以上取り組んでいらっしゃいます。
はじめは織物から始められたそうで、原料の糸を化学染料で染めてみたり、色々試されるうちに草木染めへと自然に移行され、今では施設で栽培された藍の生葉やローズマリー、季節ごとに近所の河原や草原で集める植物や、食堂で出る廃棄物(タマネギや栗の皮)、柿渋(山城地方は柿渋の産地)その他草木原料で、毎日様々な染色をされています。

       

私たちは常々、福祉と繋がりたいと考えていましたので、昨年からコンタクトを取らせていただいていました。
移転を機に距離も近くなったこともあって、今年の冬から何度か現地を伺って打ち合わせや見学をさせていただき、この夏頃から正式に依頼を始めました。
 
 
作業場は和気あいあいとした雰囲気で、
みなさん談笑しながら、おのおのの作業に取り組まれています。
シャイな方もいらっしゃれば、気楽に話しかけてくださるかたも。

作業場は染め班、織り班に分かれて作業されていて、染色の作業場は大鍋を煮る熱気に包まれていました。
職員のかたと一緒に作業されている利用者さん、生地を染めるその手は職人の手つきです。

       

いづみさんでは、完成したタペストリーやストールなどの作品を、年4回、奈良のギャラリーで展示販売されています。

 

 

草木染めは、原料の草木を採取する時期、煮出す時間、媒染(助剤)の種類や浸ける時間の違いなどの条件でその都度発色が異なります。
そのため、毎回微妙に色が違うのが魅力で、その絶妙な色合いが貴重だと感じます。

素材の段階で、そもそも生地が上質、そのうえこんなに手をかけて、
なんて贅沢なんだろうと、実は作り手として、これ製品化しても大丈夫?と心配になるほどなのです。
でも、やっちゃったー。これ、他では多分真似できない(というか、しないかな)です。
全てご縁の賜物。完成品は、多方面にご協力いただいた結晶なのです。

こうやって、ヌイトメルは「ものづくり」を通して「人の手」でつながるような仕事を細々と目指しています。
 
 

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