革と素材についての考察

2019-7-13

イベントや展示会、バッグをご購入いただいたかたへお渡ししている素材の紹介のためのカード。

毎回1000枚ほどつくるのですが、今年はじめに新しく作り直したのがもう半分ほどになってしまいました。

また発注しなきゃ、と思いながら、写真を変えようか、そのままでリピートしようか、考え中・・・

中の文章を見直しつつ新たに付け加えたりして、三つ折りになったカード。

改めてここ数年で感じたこと、今考えていることを書き加えました。

製作していると、色々とお伝えしたいことがでてくるのですが、

説明が長くなりなかなか口頭では伝えきれないので、普段はお話しできていないことを書いていると文字数がどんどん増えていき、カードの中には小さい文字でぎっしりになってしまいます。

ほとんどは素材についての説明ですが、バッグにつけている取扱説明書には書かれていないことも載せていますので、何かしらの発見をしていただければ嬉しいな、と思います。

 

革を扱う仕事をはじめて20年近くになりますが、近年は安定した革の入手が難しくなってきています。

それは、天然の素材(革の原料は主に食肉の副産物)であることに加え、使っているのがタンニンなめしの染料染め、素上げという、原料の状態がそのまま風合いに影響しやすい素材が主だからということと、

革という素材の製造をめぐる環境が刻々と変化していることも、その理由です。

同じ状態で、同じ分量が常に手に入るわけでなく、季節や生育環境、世界での需要のバランスなどで素材の状態が変化したり入手が困難になったり、

革を製造している業者(タンナー)さんが廃業されたりして突然供給が止まることもあり、

ヌイトメルでも、現在では革の状態や仕入れ状況の変化によって製作できなくなったデザイン、色が多数あります。

そして、今後も革の確保において安定することは難しいと考えています。現状として、手元にある革の特性を見極めて製作していくことになり、これから先に製作できなくなるものもでてくるでしょう。

革に限らず、生地や木材、植物や生きものを原料としていて、多くの人の手を経てつくられる素材の入手について世界の情勢や経済状況に左右されるのは当然のことです。人の手を経るということは、その人の手や場所がなくなると作れないのですから、いつも同質の素材が手に入り同じ状態の製品が作れるという安定など、天然素材に関してはどこにおいてもないように思います。

天然皮革の製品がいつまで作り続けられるのか、またその価値が認められるような価値観がいつまで続くのか、わたしたちには予測できません。産業、文化が移り変わり、いずれ天然の革製品が必要とされなくなる時代がくるかもしれません。

そういう変化のなかに世界中の「ものづくり」が成り立っていることを自覚しつつ、これからヌイトメルがどのようにものをつくっていくか、日々考えていきたいと思います。

 

ひとつひとつ違うのが革製品の魅力で、良いところです。

おなじ色でも色味の違い、アタリやテリ、ツヤや色の変化も使い手次第、使って育ててゆくタンニン革。

手に取っていただいた、今のその「もの」が唯一になりますので、愛着をもってご愛用いただければ幸いです。

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