販売すること – 3

2011-7-11

(2014.5.10 追記)
この記事は2011年、ヌイトメルをはじめたころに考えていたことを書いた記事です。
自分たちの考えの移り変わりを理解していただけるので、そのまま残しています。
現在の考えはここから少しだけ進展していますので、よろしければこちらもご参考ください。

 → 販売すること

                                                              裁断する機械「クリッカー」 ↓
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わたしたちは社会に出てから、絶えず物を作ることに携わっています。
自分たちで作ったものをちゃんと売って行こうと考え始めたこの数年は特に、外で買い物をするときになぜここでこれを買うのかということを、よく考えるようになっていました。
そして値段に関係なく、色々な意味で“バランス良くできている”と感じるものに出会ったときは、感激します。
こういう“よくできている”と感じられるものが作れたら!
そのバランスが自分とぴったりきた時に、「消費」という行動が起こるのだと思います。
 
 
考え進めるうちに、ものを販売するためには、まずどんなお客様がどんな物を必要としているのかを考えなければならないということに行きつきます。
つまり経済用語でいうマーケティングです。
たとえ自分たちがいいと思うものを作ったとしても、それは消費に値しないものかもしれない。

具体的に誰に向けて作っているのか、また作ろうとしているのか。
ヌイトメルの物を欲しいと思ってもらえるのはどういう人物像だろう。
ライフスタイルは?
持ち物は?
どういう使い方をする?
・・・そうすると、やっぱり、わたし(アツコ)と同じ“女性”が思い浮かぶのです。
そのうえで、私たちが作ろうとしているもの、作りたいもの(今は鞄、小物)はどんなものかを考えた時に、ようやく考えが固まり始めました。
 
 
鞄や小物は日常に使うものであって、だからどんな持ち物を入れ、どんな使い方をするかということが、デザインや素材選びの鍵となります。

使う人のあらゆる場面にさりげなく合うように、主張しすぎない。
だから、基本は素材の質感を活かすシンプルなデザインに。
実際に使うことを考えて、使い勝手とデザインのバランスも試行錯誤を重ねて作ります。

素材の質感=素材の品質が重要です。良い素材は、それだけで存在感があります。
高品質な革・生地・金具などの副資材、できるだけこだわった材料を使い、手を掛けて使いやすさ・デザイン性を兼ね備えた構造・仕様にします。

何でも、こだわればこだわるほど、その原材料のコスト、その手間のコストは高くなります。
ですから小売店に卸すという手法を自分たちの大前提にしてしまうと、とても高価なものになってしまうものも出てきます。

わたしたちが今作っているものは、日常に使うものといっても生活必需品ではなく、嗜好品のひとつです。
ですから高価であればあるほど、買える人、使う人が限定されてしまい、また、当初の考えから逸れてしまうように思うのです。

一部の人ではなく、より多くの人の日常に寄り添うものでありたい。
だから、自分が正当(または妥当)だと思える価格で売りたいし、納得して買っていただければなお嬉しい。
商品を作ること以外の費用をなるべく上乗せしないようにたいし、少しでもコストを下げる努力もしたい。

誠実につくるということをきちんとやりたいので、
それなら、まずは出来る限り自分たちで生の声を聞き、直接売っていこうと、はじめは「直売」でやってみようと決断しました。
次を考えるのはそれからです。

きちんと整理して考えたこの理想は、なにも自分たちだけが始めたことではなく、すでにあるカタチだと思います。
けれども自分たちも理想を追求したいと思うからモノづくりを続けるのです。
また、やってみなければわからない、がモットーです。(これまでそれで失敗したこともしばしばですが。)

心地の良い良質な素材を使い、自分たちが持てる技術を使い、使う人の目線で作り続けること。
それを、自分たちの正当だと思える値段で、納得いただいた方にお買い上げいただくこと。
使う人の生活に溶け込む、愛着を持っていただけるようなモノづくり。
 
 
天然の素材を使い人の手で作りますので、常に“完璧な製品”というのはなかなか難しいもので、使っていくうちどこかに難点が出てくることもあるでしょう。
そういう場合にも対処して品質を改善していくこともわたしたちの責務で、それをダイレクトに可能にするのも、どういうお客様がどういうものを欲しているのかを感じることができるのも、やっぱり直接お客様と接することからです。
今後、より多くのかたの目に触れるようにとも考えていますので、ゆくゆくは卸し販売もと考えてはいますが、まずは直接お客様と接してみて、それからです。
 
 
探せば何でも手に入る時代、それぞれにこだわりをもって作って、売っているものがもっと増えたら良いし、また自分もそういう作り手のこだわりを感じられるものが買いたいと思います。

そして、みなさんに納得していただけるようなモノづくりを続けていければなぁと思います。
 
 
最後に。
今回の記事は「なぜ直売をはじめたのか」をあくまで“かいつまんで”書きました。
誤解を招きそうな部分や、思いが強い部分は少し詳しく書きましたが、まだ言葉が足りないなぁと感じるところもあります。
また、続けているとだんだん考え方が変化していくこともあります。
そういうときはまたその考えや、折に触れもっとディープな内容を書いていこうとも思っています。
 
 
(2012.5.2 追記)
この一連の記事(販売すること1~3)は「ヌイトメルの考えること」としてお読みいただく項目で、ヌイトメルの理念の根幹にかかわりますので、より伝わりやすいようにと、内容を若干加筆したり書き直しました。「販売」というテーマは難しく、経済や社会に根差すもので、どれを正解ともできません。いつまでも迷い続けることだと思っていますが、少しずつでも前進していければと考えています。

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