3.14 ひとりごと

2012-3-14

環境が大きく変わった、2011年3月11日という日から1年が過ぎました。
いろんな場所で東日本大震災のことが語られ、追悼されています。
犠牲となった方々への深い哀悼の意と、またご遺族の皆さま、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

これまで色々と個人的に考えることを書いてきました。
でも、あまりここで自分の稚拙な考えを公に書くことは差し出がましくも感じていて、
何度も書いては消し、書いては消し、を繰り返しています。
ただ、この1年で、自分の中に大きな変化があったのは事実です。
毎日毎日、心の中で葛藤と浮き沈みがあります。
そんな気持ちを無視して、楽しいことばかりを書く自分に嘘くささを感じ、
1年目の区切りとして、今の自分の率直な考えというか、気持ちを書き記したいと思います。
 
 
今回はとっても長くなります。
偽善的と取られることも書かれているかもしれません。
これを読んだ、誰かを傷つけてしまうかもしれません。
だから、ご興味のあるかただけでも読んでいただいて、
一緒に考えていただければ幸いです。
 
 
福島と放射能。
離れて生活しているのに何度も浮かぶ言葉、これまでにありませんでした。
必ず、毎日何度も思いだします。
去年の3月までほぼ無関心だったことを悔やんでいて、
その怖さを知ってしまった今、私は敢えて、忘れないようもしています。

1ヵ月前の2月11日に、「これでいいのか日本!滋賀集会」という集まりへ行ってきました。
「今、福島でおこっていること」という内容で、山田真さんの講演がありました。
先日のブログで書きましたが、数年前から、こどもが風邪をひいたり、調子が悪い時、山田先生の著書にはとてもお世話になっています。

「子供たちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」を立ち上げた山田先生は、小児科の開業医です。
わたしは、頭ごなしに言い切る人はどちらかといえば疑ってしまうので、
偏見のない視点で、分からないことは「分からない」とおっしゃる山田先生は、信用してしまうのです。

そして今の福島の現状はいろんな意味でとても厳しいものだと、その実例をならべて話してくださいました。
 
 
いろんなところに書かれていますが、
放射能を気にすることで、経済活動、人間関係、その他もろもろ、様々な弊害が生まれていて、
牛乳を飲まなかったり、栄養を取らないほうが問題だ、
精神を病んだり、喧嘩したり、離婚したり、そちらの心の影響の方が問題だということも耳にします。

今福島で言われているのは、体調不良は放射能ではなくストレスによるもので、
「放射能恐怖症」の症状と言われたりするのだそうです。
そして、福島で行われる公的な検診は、そのストレスに対応するという名目なのだそうです。
医師会がそういう認識ですから、病院で放射能の不安を口にすると
「気にするな」という答えが返ってくるのでしょう。
その現状に危機感を感じる山田先生は、それに逆らう形で「子どもたちを放射能から守る小児科医ネットワーク」を立ち上げ、相談できなくて困っている人のために健康相談会を催されています。

福島で日を追うごとにかかっている見えない圧力、
気にするほうが悪いような“空気”。
無意識か意識的になのかわかりませんが、そこに住んでいる人自体が気にしなくなってきているのだそうです。
もうかかわりたくない、忘れてしまいたい人、どうしようもないので諦めようとしている人がたくさんいるのでしょうね。
行政からだけでなく、住民同士による圧力、自発的ともいえる孤立状態。
そこには、表現は悪いですがいわゆる「いじめ」と同じ構造が巣くっています。
子供のために安全な場所へ逃げることに対して、罪悪感を感じる親御さんもたくさんいらっしゃる。
東京で相談会を開催しても、福島県出身と限定すると、申込数が少ないそうで、
県外に避難されている場合も出身地を明かせずにいらっしゃるかたが多いのでしょうと推測されていました。
 
 
人口流出を抑えたい、福島県。
地産地消は福島でも適用されており、小学校、幼稚園の給食はほぼ福島産の野菜。
全てが汚染されていることはないでしょうけれど、
食べさせないと、子供がまわりから白い目で見られ、
毎日飲む牛乳でさえそうで、飲ませたくないと言うと怒られるのだそうです。
たくさんのかたが、福島県以外のホットスポットの地域、あるいは東北関東全域で同じストレスを抱えていらっしゃることと思います。
そのうえ、福島の人は他府県での被ばく検査ができないような手配がされているらしいこと、
福島県で実施される子供を対象にした甲状腺検査は、異常の早期発見のためというにはずさんだということ、
まるで異常発生率を測るデータを集めるための検診ともいえるそうです。
 
 
放射性物質の近くで生活するしかない人がたくさんいます。
無責任で恥ずかしいですが、関西に住んでいるから、
そんなに気にしなくていいと初めは思っていましたが、実はそうでもなく、

原発の安全管理がずさんなこと、
西日本の空間線量も上がっていること、
そもそも、日本ではあまりにも気軽にレントゲンやCT(震災前の年間被ばく許容量1msvを1回で超える)を撮っているということ、
探れば探るほど、知らなかった情報がどんどん集まります。
さらには、海洋汚染も心配で、
もっと言うと、認めたくないですが、今の日本の一部(そうとも言えないかもしれません)は世界でも有数の汚れた場所となってしまった。

被災地に山積みにされた瓦礫をどう処理するのか、
誰にも最善策が見いだせない状況に、心が揺れます。
放射性物質以外にも問題のある科学物質で汚染された瓦礫もあるようです。
被災地を支援したい気持ちはもちろんあるけれど、個人的な感情では受け入れ難い。
瓦礫が汚染されているかどうか、あの山積みの瓦礫を、誰かが、全部検査するの?
痛み分けが美学とされるのは、
大戦中のそれと重なり、違和感を覚えます。
そもそも放射線を検出する機械のデータが確かなのかも、
加工食品はその原料まで検査されているのかさえ、わかりません。
検査から漏れ汚染された食品が流通しているのかもしれません。

放射性物質は、一定期間で体外に排出されるそうですが、
取り込みつづけると体内にある間はずっと被ばくするという状態です。
そして、その影響の出る場所と時期は人それぞれで、感受性の強い子供、免疫機能が弱い人、
反応が出やすい人から異常が見つかるようです。
時期も部位もバラバラで、遺伝による異常か、生活習慣によるものか、
他の原因との見分けがつかないため、因果関係が立証しづらい。
被害者は明らかに異常を感じていても、チェルノブイリでも、劣化ウラン弾(湾岸戦争・イラク戦争)による住民や兵士の被害でも、放射線によるものとは認めてもらえないケースが存在すること、
補償とは、ただお金だけで解決させられていること。
でも泣き寝入りしたくない一心で補償を求める被害者は、その他に問題解決の方法がない。
そして日本の原発で働く被ばく労働者も、一般にはあまり知られていないところで被害にあっているということ。
ひいては世界中に原発はじめ核産業の被害にあっている労働者がたくさんいるという事実。
こういった問題の数々は、意識的に探さないと耳に入ってこない。

人間の思考は、今も昔も同じで、
だから、知らなかったら同じ悲劇を繰り返すのだと思います。
 
 
昨年末の事故終息宣言後も、放射性物質は少しずつ漏れているようですし、
ちらばった放射性物質もなくならずに移動するだけです。
福島第一原発にもまだまだ問題があるようです。
今一番怖い、4号機の使用済み核燃料プールの状態が、とっても気になります。
専門家からも楽観論と悲観論の両方あるようです。

原発は麻薬と同じです。それが理解できる、1983年当時の敦賀市長の講演に唖然とします。
http://trust.watsystems.net/matuo/matuo3.html
原発によって支えられた町の経済、稼働しないと生活が成り立たない状況にも心が痛みます。

けれど、下のサイトの文章を読むと、今の原発は重大事故のないことが奇跡かもしれないと、恐ろしくなります。
「原発がどんなものか知ってほしい」原子力発電所で技術者として20年間働いていた平井憲夫さんの話。
 http://www.iam-t.jp/HIRAI/

 以下参考サイト

 「科学的・技術的見地から出された科学技術者による再稼働反対の声明」

 ストレステストの問題点、再稼働反対の根拠
  http://blog.goo.ne.jp/gimlidwf2011/e/ef0f8402ed827e3bca5b8619526892c0
  http://blog.goo.ne.jp/gimlidwf2011/e/16b43faa5d6351047348d52829159255
  http://blog.goo.ne.jp/gimlidwf2011/e/6ddeaea81abd8b5898336a66dbca8bed

 「原発で働く労働者」 http://www.nuketext.org/roudousha.html
 
 
低線量被ばくに関しては「わからない」というのが本当のところだそうで、
わからないことにおびえ、くよくよすることの弊害を指摘している人も多いようです。
笑う人には放射能は寄って来ない説は、免疫機能の面では一理あるかもしれません。
でも、くよくよする原因ははたして自分だけにあるのか、
全員が忘れてしまえば解決するのか。
それって問題のすり替えじゃないの?と思ってしまいます。
最大の原因は、原発が稼働していて、「想定外」の災害が起こると暴走したら止まらないうえ、
今の技術では処理できない廃棄物をどんどん作り出していることのほうが問題だと。
そもそも、命と経済性を天秤にかけることは、倫理に反することだと思うのですが。
そのうえ原子力は結局一番高くつく電気だった。
 
 
気にしないほうがずっと楽です。
諦めて、口に出さず、毎日のほほんと楽しいことを考えてるほうが、そりゃ楽ちんです。
忘れている間は、事故以前のように生活できる。
 
 
少し前までは、知らないほうが幸せなことがあるのかな、と思っていました。
でも今は、自分は絶望的なことでも、知っていたいと思う。
知らないことで、誰かを傷つけるからです。
誰も傷つけたくないということではありません。
誰かの犠牲と努力の上で自分が生かされているということをきちんと意識して生きていたい。
そう強く思うようになりました。

インターネットでは情報が多すぎて、どれを信じていいのかと混乱することもしばしばあります。
情報を集め、自分の中で考え、収斂し、選択していく。

知らないでいることも選択です。
でも、騙されたから被害者だとはもう言えない。
騙されることで、誰かに被害が及ぶなら、騙された自分は加害者だと。
近くで深刻なことが(運良く)まだ起きていない今だから、言うべきなんだと思っています。
今の現実は、自分も含め、人が選択してきた結果だからです。
若狭から近い場所で生まれ育ったにも関わらず、わたしは、無関心で無知でした。
これから先、もし子供に何か起こった時に、何も知らなかったら、わたしは絶対に後悔する。
それに、現在は結果ではなく、これから先の過程でもあります。
自分に何かができるとも思いませんし、エラそうなことを書いてしまっているなと、
恥ずかしいとも思います。
今、自分は知ろうとする努力を始めたところです。
最終的には自分の身は自分で守ることを認識して、覚悟を決める。
つい楽な方に流されてしまう自分を奮い立たせる毎日です。

そして、忘れずに、口に出しながら、でも笑っていたいです。
 
 
山田真先生の講演内容は、こちらの本に詳しく書かれています。

 「小児科医が診た放射能と子どもたち」 (わが子からはじまる クレヨンハウス・ブックレット / Amazon)

クレヨンハウス・ブックレットのシリーズは、どれも読みやすかったです。
 
 
山田先生が推薦されていた本です。とても勉強になりました。

「放射線被曝の歴史(増補) ~アメリカ原爆開発から福島原発事故まで~」 中川保雄 著
 
 
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
デリケートな問題ですので、異論、反論もあろうかと思います。
気分を害したかたがいらっしゃいましたら、申し訳ございませんでした。
勉強不足な点も多々ありますが、普通の主婦としての、迷いながらの一意見ですので、何卒ご容赦ください。

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