白ヌメの鹿革のこと

2013-2-1

今日は今年はじめに触れた、白ヌメの鹿革について、少し詳しく書こうと思います。

 (ヌメ革=植物タンニンなめしの革のこと 詳しくはこちら → なめしとは) 

ヌメ革は、手の脂を吸ってツヤが増す箇所があったり、擦れて傷ができたり、汚れたり、日に焼けていったり、使うほどに変化し使う人の個性が現れる革です。
白ヌメ革は特に、その個性が際立ちます。
オスの鹿には大きな角がありますし、他の動物に比べて革の表面に傷が付いていることが多いものです。
染色すると傷は目立たなくなりますが、無色だとより目立ちます。
ですから、素上げ(※)で使う場合は、革屋さんからできるだけ状態の良いものを選別していただいています。

 ※ 素上げとは?
  製革工程中に塗料やほとんど特別な加工を施さないで、
  革特有の外観を残したまま加工を終えた状態の革をいう。白ヌメとも呼ぶ。

  (参照元:社団法人 日本皮革産業連合会)

鹿の白ヌメ革は、赤ちゃんの肌のようなピンクがかった白っぽい肌色です。
素上げ革は濡れた部分の色が変わり、シミが残ります。
このまま形にするとあまりにも繊細ですから、実用性を考慮し、革に手を加えます。
 
 
鹿革を水で洗って、伸ばしながら広げて干します。
乾いた革に、油分をすりこみ、まんべんなく日光を当てます。
固まってしまった線維を手で揉んで、鹿革本来の柔らかい風合いに戻します。

 

このように段階的に手を加えたナチュラルの鹿革は、驚くほど色の変化を見せてくれます。
そのなかで、一番好みの色の段階でカバンの制作にかかります。
といっても、原皮の個体差やいろいろな条件によってその都度色が若干違いますが、
それも実際に使用するうちに、どんどん色ツヤが変わっていくのです。
 
 
シンプルなものほど、素材の表情が印象を左右します。
なんとなく好きか、そうじゃないか、というその「なんとなく」を、具体的な色と風合いに落とし込む作業。
微妙な質感と雰囲気を大切に、いい感じに仕上げる、
という地味な作業の紹介でした。

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